『行動主義 レム・コールハース ドキュメント』瀧口範子では、思考のためのツールとして、「ブックレット」が使用されていることが紹介されています。
前回からのつづきになります。
「ブックレットってすごい。あんなにまとまりのなかったチームワークが、ブックレット上でしっかりひとつのものになっている!」(p.62)
何人かで進めているプロジェクトの場合は、実際に進んでいるのか、向かっている方向がみんなで揃っているのか、不安になるところだと思います。その方向が間違えている場合には、その発見が早ければ早いほどいいと、いつも思います。
上司がどうしてこうなってしまった?と問われたところで、それを管理していない上司が悪いとなってしまいます。また、上司としては、毎日確認していたが、、、となると、確認の仕方が悪いということになるのではないかと思います。
大抵の問題は、個人的な意見としては「誰も悪くない!」です。誰かのせいではないのです。みんなの工夫が足りなかった。それだけではないかと思います。
なので、この確認の仕方として、このブックレットの提案ということです。
提出締め切り間近になってもいったい意見の統一がとられているのか、ひとつのポイントに向かってチームが収束しているのか、正直言ってわからなかったのである。(p.60)
ところが、それを見事にまとめ上げたのがブックレットだった。(p.61)
締め切りに追われて断片的にしかでき上がってこないバラバラの図面、ドローイング、コンセプトのリスト、おびただしい数の表などが、一連のものとして綴られることによってひとつの大きなストーリーを物語っていたからである。
ブックレットは、そのプロジェクトの軌跡なのではないかと思います。
ことにこのブックレットは、ポップで楽しげな雰囲気に仕上がっていた。これまでに見たこともない新奇な形をしたニューヨークの高層ビルが、ページを操るごとに登場し、マンガのような吹き出しまでついている。
この数カ月皆が味わってきたアイディアの出ない長い時間、床面積や収容人数を検証する細かな計算作業、チーム内のゴタゴタ、暗い設計室での模型作り。このブックレットはそんなことをおくびにも出さず、あくまでも前向きな未来の物語を語っている。(p.61)
あーでもない、こーでもないと話し合ってきたことをブックレットにして、また見返すと、また意見が出てくる。議事録をバラバラと綴るのではなく、そこで行ったこと、課題なども、連続的にブックレットで綴っていくことで、この方向性であっているのか?と見えてくるものがあるのではないかと思います。
気がついたら、何も改善されないまま1年が過ぎたということも、このブックレットであれば、前に進むしかなくなり、問題も明るみになります。
そのプロジェクトの奇跡が分かることで、やってきたことをアナログで感じることができるのは、人間としては、重要な感覚なのかもしれないと思いました。
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