『犯罪心理学研究第39巻第2号(2001)ー 野村, 金, 工藤 注意欠陥/多動性障害ADHDと行為障害』では、関東医療少年院に収容された行為障害と診断できた30名を対象にADHDの既往(※)を後方視的に調査し、約40%という数値で、小学校低学年時代ADHDの診断基準を満たす多動性や不注意を示したと考えられ、また一般少年院収容者と同質である精神科以外の対象でも、ほぼ同様の比率で、ADHDの基準を満たし、不注意・多動・衝動性などの行動傾向を示していた者が少なからずいるということが分かった。
ADHDの既往が推定された対象は、早期から非行が始まっていたことから、この2つの結びつきがあることがこの論文から分かりました。
ここだけを考えると、ADHDであると思われるお子様を、早期的に見守る(社会的な保護)ことにより、40%もの犯罪件数を抑えることができるということになるのではないかと、単純ですが思ってしまいました。
“ADHDと診断された子どもが後に行為障害や反社会的人格障害になっていく場合,どれはいかなる理由に基づくのであろうか。大別して二つの理由が考えられる。
一つはADHDの衝動性がそのまま暴力行為や社会的なきまりの無視に結びつく場合である。(中略)
もう一つは,その症状のため集団生活に不適応に陥り,それが非行や犯罪につながっていく場合である。ADHDの子どもは理解があるので,叱られれば事の是非は理解できる。しかし同様の失敗を繰り返してしまうため,周囲はどうしてもいっそう厳しく叱責したり,非難したりしがちである。これは確実に自己評価を低め,自信や意欲を失わせる。周囲の大人とも安定した関係を結びにくい。
こうした経過が子どもを非行や犯罪などに追い込むことがありうるだろう。p.34”
かなり、冷たい内容からのスタートになってしまいましたが、私個人が、保育園で勤めていた経験や、犯罪について、教育についての知識をつけるべく、学んできたつもりで、まだまだ学ばなければならないことが多る立場での話となりますが、お子様ご本人、また、親御さんを考えると、とてつもない努力、配慮が必要になり、また、まずは受け止めることができるかというところが難しい問題であります。
ですが、それは、親御さまだけではなく、お子様ご本人のためであるので、納得いかないことであったとしても、お子様ご本人だけではなく、まわりの人々も幸せな人生を送るために、専門知識だけでも、学んで欲しいと切に思っています。
“ADHDについてはメチルフェニデートを中心とした薬物療法が相応の効果を有することが指摘されている。早期に診断し適切な治療的介入をすることで子どもの成長を助け,非行を予防できる可能性がある。またADHDの適切な診断と専門家による援助により養育者を支えて子どもとの関係がこじれるのを防ぐことができる可能性がある。多くのADHDは小学校高学年から中学にかけて軽快していくのであり,なんとかそのときまで問題をこじらせずに援助することが医療関係者や援助職にある者の役割である。p.35”
個人的なお願いとしては、犯罪を減らしたいという想いがあるのですが、いつも調べていると、それは、結果であることが多く、根本的には、犯罪者を生み出さないということは、みんなが幸せであるということなのだと、思っています。
子どもは親を選べないと言いますが、親もまた子どもを選ぶことができません。家族という存在は唯一無二であります。
また、子どもにとっては、親に(どんな形かは個人差がありますが)愛されたいというのが、本能としてあるので、もし、お子様がADHDの疑いがあるのであれば、お子様が幸せに生きて行くために、幸せになるための接し方があるそうです。正確には、注意しなければならないことがあります(やってはいけないことになります)。
“10代後半となったADHDの少年に対して(中略),治療教育的には,しっかりした枠組みの中で,分かりやすい指示指導を心がけていくことが望ましい。曖昧な状況は苦手であり,明確な指示を与え,成功体験を評価して自己評価を高めていくことが重要とされている。”
本論文では、このように紹介されています。正しい知識は、もちろん必要なのですが、まずは、誰かに相談をすること、周りの人に相談することができなかったら、専門家に相談をすることによって、心配や、不安も緩和されていくと思います。
もしかしたらと思った親御さんや、保育園、幼稚園でももしかしたらと思って、親御さんに相談され戸惑っている方も、お子様のために、相談に行っていただきたいと、切に思います。
※既往(きおう)とは、過去。また、すんでしまった事柄。(コトバンクより)
<参考文献>
『犯罪心理学研究第39巻第2号(2001)ー 野村, 金, 工藤 注意欠陥/多動性障害ADHDと行為障害』
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