前回のつづきになります。
前回では、自己統制(セルフ・コントロール)についての内容でしたが、今回は、この自己統制が低いことで、犯罪行為が起きやすいと考えられるとして、この自己統制が低いことは、育った家庭環境が影響しているのではないかとされています。
今回は、このことについて、引用を含めて考えていきたいと思います。
起源は、幼少期のしつけなどに由来し、生後6〜8歳までの適切な家庭教育、もしくは家族代価的なものによる働きかけが、高い自己統制を身につけさせるかどうかに大きな影響を及ぼすと指摘している。
代価的とは、あるものの代わりとして扱われるさま(代替的)。という意味になると思います。
こんなにもハッキリ書いてくれているので、それでは、この6〜8歳の間の家庭教育について、対策していけばいいんだ!と思うのですが、この内容自体、実証的な研究は、最近になって開始されたので、これが本当にそうなのかということは、まだ分からないということなのだそうです。残念ですが、現代はエビデンスが重要ですし、データや、ヒアリングをもとに検証していくことが重要であると思います。
そこで、裁判を終えた受刑者の方を対象にしたアンケート調査(1999年5月〜2000年3月)を行ってくれた結果が出ていたので、ご紹介します。
データは膨大なのですが、その中でハッキリと分かったことは、対象者が全員男性ということも関係していると考えられるのですが、実母の欠損よりも、実父の欠損の方が、子どもに大きな影響を与えることであるということです。
Lynn(1978)は、父親の役割は家庭の中に計画設計の技術、規律ある目標追求、いつかは大きな満足をもたらす遠くの目標のために目先の満足を遅延することなどを提供し、子どもが社会の中で大人として責任を果たせるように訓練と統制を与えることであるという。
田中(1991)は、男児は、父親を同一視することによってエディプス葛藤を解決し、父親の掲げる多くの理想や、根底にある価値観を取り入れると述べ、父親への同一視が子どもの性役割の獲得や道徳的行動の発達に重要な役割を果たすとしている。
つづいて、
しつけにおける父親の役割の重要性、彼らの父親への同一視の柱がうかがわれるのではないか。
(中略)
親自身が低自己統制ではれば、子どもがそれをモデリングし、そのような家庭内の文化に触れつづけることによって自らも低自己統制となっていく可能性も充分考えられる。
(中略)
一般的に不適切と考えられる行動の多い親に不安定な家庭環境の中で育てられる、それを身近に見て育った子どもは、自己統制能力が低くなる可能性が高まり、犯罪に関わる可能性をかなりの確率で高め、特に20歳までの非行行動という形で現れやすくなることが示されたといえる。
おそらく、自己統制の低い親に育てられたということは、その親の親もまた自己統制が低い可能性があります。
必ずとは一概にはいえないと思いますが、それが当たり前なんだと思ったら、その人生のイメージしかないのだとしたら、同じ、自己統制の低い道を歩んでいくのだと思われます。
逆に、自己統制の高い親のもとに育った子どもは、みんな高いのかというと、私の周りの人はほとんど高いとは言えない生活をしていますが、不安ながらも、自身のやりたいことをやっている、だが、どこかで、現実を受け入れられない、理想と現実というギャップがあって、逃げたくなる気持ちを感じる人もいます。
貧困の家庭からは、貧困しか生まれないというような、負の連鎖がありますが、こういった人生もあるということを知る機会を増やすことによって、自らが歩みたい人生を選択できる社会であれば、連鎖という差別的な表現もなくなるのではないかと思っています。
どんな父親であったとしても、自分で生きていく術を身につることができれば、自己統制も結果的に高くなっていくのではないかと考えます。
以前から思っている通り、親のせいにしてしまうのは、本当の意味で親離れしていないと考えられるので、子どもであろうと、大人であろうと、自分はどうしたいのか、自分がどうにかすればいいのではないかと、個人的な見解でまとめてしまう結果となってしまいました。
結果的に、しつけというところではなく、高自己統制な父親がいるかどうか、というところにひとつの答えが出たのだと思います。
これとは別に、幼少期の家庭環境についての情報を充分に把握することができなかったと、さらなるデータの取得をしたいと述べていました。もう、その内容があるのか、ないのであれば、是非ともやっていただきたい研究を欲しいと強く願います。
引用部分は、2001年『犯罪心理学研究』第39巻 第1号の「犯罪者の自己統制、犯罪進度及び家庭環境の関連についての検討」は、河野荘子氏、岡本英生氏による内容となっています。
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