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  1. 犯罪

心理士は、その人を写す鏡の存在

自己統制について見てきたのですが、現在の研究はどのようになっているのかを確認するため、今のところの最新刊である『犯罪心理学研究 第56巻 特別号(2018)』を見てみました。

全体シンポジウムのテーマは、「凶悪犯罪の発生を防ぐことはできるか」です。

ミニシンポジウムのなかで、気になったことは、

「ひと・社会・地域資源への“つながり”としての音楽 アートを媒介としたナラティヴ・アプローチの可能性」、

「受刑者の一般改善指導としてのR&R2の導入」

「矯正処遇における認知トレーニングの可能性」

「医療・矯正教育・アセスメントの実情と可能性ー第3種(医療)少年院の処遇ー」などです。

このテーマの目次の中で、興味の沸いたところから見ていこうかと思います。

 

p.82  辻啓之、ジェイムス朋子さんによる「誰にも話せなかったことが語られるプロセスの検討ー再犯防止を目的とした刑務所における短期力動的集団精神療法事例からー」

このタイトルと見たときに、犯罪行為をしてしまう方は、誰かに自分の気持ちを話す機会があったら、違ったのではないかと個人的に思っていました。

 

それまで誰にも話せなかったことが誰かに対して語られる時、その語り手は自分の人生を見つめ直す機会に出会っていると言える。

誰にも話されないことは、他者の目にさらされないが故に、未構成のままになっている部分が多く、様々な水準で解離(かいり:無意識的防衛機制の一つであり、ある一連の心理的もしくは行動的過程を、個人のそれ以外の精神活動から隔離してしまう事である Wikipediaより)されている。

それが聞き手に向けて語られることによって、人生の物語(ナラティヴ)は作り直される(辻2017)。

このことは、犯罪を繰り返してきた人たちがこれまでとは違う人生を歩み出す可能性を広げることと言える。

 

刑務所における再犯防止指導は、多くの場合、集団で行われており、グループに入れられた受刑者は他の受刑者の目を強く意識して、自分の弱みになりそうなことを話さないことが多い。

受刑者の大半は他者に裏切られたり、裏切ったりしてきた過去を持つため、目の前にいる人を安全だと感じることができにくいこともあり、再犯防止指導グループの中で誰にも話さずにきたこと話すということはそう簡単には生じない。

この研究では、いつもはグループで行なっていることを、対個人で行うこと。行う方は女性臨床心理士の方で、特に意識することなく、受刑者に対して接してもらい、受刑者の反応を見て、そこから研究者が考察をするというものです。

また、何人も試したワケではなく、1人の男性(成功している人が薬物乱用の状態)を対象にして、実験的に行なった内容となっています。

グループだと、言えること、言えないことがあるというのが、この対個人であると言いやすい、話せなかったことを引き出すことができるのではという期待が、ここで感じられます。

現に、これまでの男性の生い立ちを声に出していきながら、薬物乱用をしている現状に対して、率直、「心が弱っちいよね」という表現をしたところ、「それはありますね」と素直に認めた場面がありました。

これは、グループであると、恥、怒り、悔しさ、みじめさなどと喚起しやすいと感じられるが、対個人であれば、その感情がなく、すんなりと受け入れることができる(個人差があると思いますが)可能性が高いのかもしれません。

考察のなかでは、

臨床心理士のフィードバックが、ありのままのその人を立体的に描写するように、多角的に多様な側面を指摘し、その人が臨床心理士からどう見えるかという現実に直面させていることは注目に値する。

そのような率直な直面化(ちょくめんか:相手に、その人のテーマはなにか気づいてもらうためのヒントを与えることです。クライアントは、しばしば、問題の本質から目をそらすために、さまざまな防衛をします。セラピストは、クライアントが、そうした防衛を解いて、本来のテーマに向かうサポートをする必要もある 統合的セラピー ロールプレイ トレーニング「共感と直面かとPower of Being」より)が、臨床心理士に対するメンバーの信頼を生んだことが、これまで誰にも話したことがないトラウマ・エピソードが語られる前提となったと感じられる。

このことは、受講者の自己開示が自重されやすい刑務所における短期集団精神療法において、率直に多様な直面化を繰り出すことが有効であることを示唆している。

以上から、再犯防止指導の指導者は直面化を避けようとせず、受講者をごまかしのない対話を重ねることによって治療的協働関係を築くよう努める姿勢で臨むことが望ましいと考える。

こちらの小論での引用文献では、門本泉・嶋田洋徳編(2017)性犯罪者への治療的・教育的アプローチ、金剛出版

臨床心理士がどのようなプロセスを経て、実践をされるのか分かりませんが(興味はあります)、「心が弱っちいよね」という言い方をするのも(ここでは、ストレートなことを言うことが関係性を生むのではないかという話なので、傷つく言葉自体の話ではありません)、表現の仕方については、結構自由なんだなとも思いました。

 

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