「共感性がなくて非行にはしり、共感性があって非行にはしる(2)」の続きになります。
「共感性の乏しさ」が非行に関係しているのかどうかの紹介になります。
前回は、アンケートによって出てきた結果の紹介でしたが、今回は、その結果から著者の考察をご紹介いたします。
因子得点による年齢的な変化について見ると、
男子では
他者の感情に否定的に反応する因子、
他者の苦痛や苦境に共感する因子、
他者の感情に巻き込まれる因子については年齢の高まりについて得点が高くなる。
これは発達心理学的な変化と解(げ:理解することができる)せられる一方、低年齢から非行を犯し、少年鑑別所に収容されている者の特徴と見ることができる。
すなわち、他者の否定的な感情や苦境に対する共感性が低く、感情に巻き込まれないがゆえに非行が早発しているとも解釈できる。
女子では、
他者の苦痛や苦境に共感する因子では、男子同様のことが指摘できるが、
他者の感情に巻き込まれる因子では、16・17歳が落ち込んでいるのが特徴的である。
非行範囲別では、
男子は、
粗暴犯該当者の16・17歳で、他者の感情に巻き込まれる因子の得点が高く、
薬物犯該当者18・19歳で、他者の感情を推測する因子の得点が高く、
風俗犯該当者14・15歳で、他者に影響される因子の得点が高い。
女子は、
薬物犯及び風俗犯非該当者18・19歳で、他者の否定的感情に共感する因子の得点が高く
風俗犯該当者18・19歳で、他者の苦痛や苦境に共感する因子で得点が高い。
このことから、
男女とも
共感性が低いと非行に走るとは言えず、かえって共感性の下位因子(下の方を示す因子)が高いと非行に走る場合があると指摘できる。
男子では、
共感性の中でも、他者の感情への巻き込まれやすさが、粗暴犯などの背景に指摘でき、先行研究の結果を裏付けている。
また、薬物犯では他者の気持ちを推測する能力の高さがストレスを呼び、非行に走ることも十分考えられる。
女子では、
薬物犯や風俗犯の18・19歳において他者の感情の否定的受け止めやすさが指摘でき、
薬物による実現非難や自己の徳性を害するような行いの背景に認知や情操の歪みを指摘できる。
“すなわち、他者の否定的な感情や苦境に対する共感性が低く、感情に巻き込まれないがゆえに非行が早発しているとも解釈できる。” ことについては、共感性があれば、浅はかな考えのもとで、衝動的な犯行がなくなるということも言えると思います。
こういった、年齢が低い子どもたちに対しては、国語の授業がとても重要なのではないか?と思いました。ですが、この共感性がない、この時点で、共感することができない(相手の気持ちが分からない)、イメージする力がなければ、国語をやっても意味はないのかもしれないとも思いました。
だから、親御さんや、周りの大人の存在が重要であることは、言うまでもありません。やれることと言えば、この幼少期の段階で、たくさんの経験をさせること、体験することは重要なことであるということが、身に染みて理解することができます。子育てで重要なのは幼少期であり、これは親の責任であると言っても過言ではないと思います。やっぱり、この時期に、社会全体が、各家庭に支援しなければならないと心から思います。
体験させるということを、全部親が一緒に付き添うことは難しいし、無理だと思います。例えば、動物を飼うことで、自動的に生や、手加減について学ぶことができます。音楽を家で流していれば、メロディが耳につき(音について学ぶことができ、言語以外の表現方法を知ることができます)、学校に行っていることで、知識を得ることができます。
ここで、得た知識について、何か疑問が生まれ、そのことについて、追求させる気持ちを抑えなければ、子どもはその疑問に対して知ろうと、新しい知識を得ます。それが、本当の学びではないかと思います。
TVで見ましたが、アグネスチャンさんは、ここで、どんなに忙しくても、料理中でも、作業を止めて、話を聞くのだそうです。それだけではなく「質問してくれありがとう」とも、言うそうです。この声かけは、「すごい!えらい!」と言うよりも、よっぽど効果があると思います。
知識を得ることは、ゲームをすることよりも楽しく、人をケナしたり、いじめることがつまらないと思える、その経験をさせることで、年齢を重ねても探究心がつき、結果的に非行、犯罪行為に結びつかないのかもしれない。
“共感性の中でも、他者の感情への巻き込まれやすさが、粗暴犯などの背景に指摘でき、先行研究の結果を裏付けている。” ことについては、少年マンガに出てくるような感情ですが、結局、手をあげてしまった方が、裁かれてしまうということを理解していなければなりません。
もちろん、子どものうちから、このルールを教えることが重要ですが、アグネスチャンさんは、ここで、思春期になると、ホルモンの関係でイライラしてくるから、イライラしてきたら、自分のせいではなくて、ホルモンのせいなんだから、大丈夫だと事前に伝えていたそうです。そのため、アグネスチャンさんの子ども3人は、反抗期らしい反抗期がなかったのだそうです。
素晴らしいことに、アグネスチャンさんは、子育ては生きる喜びということを言っていました。楽しんでいることに加え、子どもへの愛が、そのエピソードだけでも伝わってきます。それは、子どもにも、絶対に伝わっていることだと思うので、あたたかい気持ちにさせてくれます。後悔のない、あの日に戻れない日を大切に子育てを送りたいのは、全ての親御さんが思っていることだと思います。アグネスチャンさんありがとう。もっと子育て教えてください。
<参照文献>
「犯罪心理学研究 第39巻 特別号(2001)」の10ページにある「非行少年の共感性に関する研究(Ⅳ)」出口保行(高知少年鑑別所)、大川力(帝京大学)
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